Tuesday, August 31, 2010

「中京標準語圏」の形成?


僕は方言が大好きです。そして名古屋も大好きです。(特に食べ物。)名古屋以外の中京圏はあまり行ったことがありませんが、機会があればぜひ行きたいと思っています。中京圏の方、これを読んでも気を悪くなさらないでくださいね。
中国のネットを見たら、「名古屋弁を学びたいけど、今の名古屋では『標準語』しか使ってないのか?」という質問がありました。確かに、名古屋に行くと若い人からは準東京式共通語(私は「標準語」ではなく、共通語というべきだと思っています、そして日本にはいくつか共通語があります)ばかり聞こえてくるような気がしますね。
しかし、それは名古屋の特徴を持った、名古屋式の共通語であることに気がつきます。その中でもよく知られているのが、「みえる」ですね。東京式共通語では、「いる」と「来る」という、意味が全然違う2つの動詞を丁寧にすると、両方「いらっしゃる」になってしまい、紛らわしいことこの上ないのですが、名古屋では逆に、「いる」と「来る」の2つともが「みえる」になります。東京では、「来る」という意味のときに限り「みえる」を使います。それで、次のような名古屋の特色をもった「標準語」のセンテンスが生まれます:
例:
あの方は何をしてみえる方ですか?(名古屋人)
(東京風:あの方は何をしていらっしゃる方ですか?)
これを全国的に使われている「標準語」だと思っている名古屋人が大変多い、という話を大変よく聞くのですが、どうなんでしょうか。個人の経験では、若い頃、名古屋出身の友人にこれを質問したら、露骨にいやな顔をされましたので、それ以来、面と向かってたずねる勇気がないですが、社会言語学的な好奇心から、とても知りたいのです。どちらにせよ、意味が通じないということはないし、それでいて名古屋のアイデンティティの特徴も出ているので、とてもすばらしいと思うのですが・・・
ネット上で、この「みえる」のルーツはもともとの伝統的名古屋弁から来たものだという話を読んだのですが、名古屋弁はよく知らないので、説明できません。何かご存知の方が「みえたら」教えてください!
さて、もうひとつ気づいたのは、名古屋で形成されたこの「名古屋標準語」が、人的交流によって、これまで名古屋弁は使っていなかった中京圏各地にも広がりつつあるかもしれないということです。たとえば、三重県や岐阜県にご在住の方々からも、「みえる」センテンスをお聞きすることが頻繁にあります。名古屋弁圏ではなくて、「中京共通語圏」が形成されつつあるのかもしれませんね。
以前は大阪弁は使われていなかった、神戸、京都、四国全域、三重県西部、中国地方東部などの大変広い地域で、若者達を中心に、大阪弁をベースとした「近畿共通語」が確立されていると聞きますから、中京共通語の発展も自然な現象なのかもしれません。ただし、近畿共通語の話者は、自分が話しているのは東京式共通語とは異質のものだと意識しているわけですが、中京共通語の場合は、アクセントが東京型であるなど、東京式共通語との共通点が多すぎて、自分が話しているのが中京圏の特徴のある共通語であるということを意識していないということなのかもしれません。
願わくば、全部が全部中京共通語化してして、地元の言葉が消滅してしまうという事態は回避され、中京圏各地の方々も四国南部の若者たちのように、地元の伝統的方言と地域共通語を使い分けられるバイリンガルとなってほしいものです。